デヴィッド・グレーバーの死

古代マヤ暦の世界観や暦体系の基本的な概念などについて、執筆を進めているのですが、原稿と向き合うって本当に難しいとあらためて感じています。

「書き言葉」と「話し言葉」は、私にとっては「フランス語」や「ドイツ語」と母国語の日本語くらい違っていて、話し言葉を翻訳しながら言葉を選んでいかないと、書き言葉にした途端「こういう意味じゃないなぁ」と消したくなってしまう。そんな繰り返しがボキャブラリーの少なさと、表現力のなさを私自身の思考と内面にぶつけられます。

古代マヤ文明の世界観や暦について書くとはいうものの、マヤ暦のことだけを書いたのでは説明も理解もできないため、色々な文献やたくさんの人の思想や思考を引用、参照しながらマヤ暦の体系哲学や先住民の思考などについて解説していきますので、参考にする書籍が山積みになっているのは仕方がありません。

執筆のプロットを組み始めた時、マヤのことで大事な説明をしなければいけない思考の継承や歴史的なことについて、私と同世代のアメリカの人類学者で、教授職にありながらアナーキストと呼ばれるような活動家としても自分の意見を展開していた「David Graeber」を参考にしていました。

彼の著した『負債論』や『民主主義の非西洋起源について』を読み、特に彼の真面目で邪心のない少年のような視点から語られる社会や人間や文化についての議論は、言語化できずにいた私に光を与えてくれた書籍でした。

David Graeber は1961年2月12日生まれ マヤ暦では「コンドル周期 祖先・5」

の生まれですので、宇宙人のように自由で芸術的なセンスに飛びぬけていながらも、地上では自分の信念をもってわが道を進む未来志向の精霊が守護していました。

しかし突然ショックな出来事がおこりました。

COVID19感染が拡大しはじめていた昨年の9月、彼は家族と共にイタリアを訪れていましたが、ヴェニスで突然亡くなってしまいました。報道によれば死因は特定されず、2020年9月2日、ベネツィアにて気分が悪くなり救急車で病院へ運ばれたあと、亡くなったとあります。

2020年9月2日に死亡

マヤ暦では「ヘビ周期 道・8」がエンジェルバースデーとなり、この世界を旅立ちました。

ちょうど数日前に一周忌を迎えました。

https://book.asahi.com/article/13735729

「私たちは99%です」というフレーズを広めることで知られる作家で活動家のデビッド・グレイバーが死去

彼の存在と彼の死は、何を伝えているのだろうと、この数か月私は色々と考えてきました。

もちろん公正な世界を求めて活動したウォールストリート占拠運動や、本当に自由な社会を求めて行動に移してきた彼の生き方は多くの人を魅了し、感染させてきただろうと思います。

マヤ的にみるとどうなのだろう?

「祖先5」であった彼は、「道8」の精霊とともに天界へと転生したことになりますが、彼の「声なき言葉」「声なき主張」「言葉なき声」「言葉なき存在」が今の私たちに大切なメッセージを発しているように感じてならないのです。もともと「祖先」と「道」は一本の生命の樹として繋がっている、幹と根っこの関係。

彼は「この世界の根っこを支える虹の架け橋になりたいのだ」と「道8」の日の精霊が伝えているように感じています。

今年2021年8月16日が「祖先5/コンドル周期」でした。

彼が生きていたら、西暦計算では今年2月に還暦を迎えて、マヤ暦では精霊が85才の誕生日を迎えた長老、賢者となるはずの時でした。

私は彼から学んだ大切なことを、やっぱりマヤ暦の継承と繋がっている部分はしっかりと受け継いで、語っていきたいと考えながら、彼の笑顔を見てまた書籍に目をやる、そんなことを繰り返す1周忌となりました。

「二十世紀を通して、『西洋文明』という概念は、植民地帝国が次第に解体していく時代にうってつけのものであることが明らかになった。」

「この北大西洋の世界システムは、ほとんど想像しがたいほどの破局ーー複数の文明の絶滅、大量の奴隷化、少なくとも数億人の死ーーを通して生み出されたものだ。 このシステムはまた、アフリカ人の伝統、ネイティブ・アメリカンの伝統、ヨーロッパ人の伝統を絶えず融合させることで、新たな種類のコスモポリタニズムをもたらすことになった。」 

『民主主義の非西洋起源について 「あいだ」の空間の民主主義』
David Graeber


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