古代密儀と叡智の世界


 
「密儀」や「叡智」というふだん耳慣れない言葉に、
私たちは何か怪しげな、そして秘密めいた影と神秘を感じますね。

けれどその意味を知ってみれば「なあんだ…」と理解できることなのです。
なぜならそれは、私たちの身近にある世界や考えを表現しているだけのことだからです。 
 

哲学はもとは、古代の宗教であった「密儀」から生まれました。
密儀が崩壊するまでは宗教と離れたものではなかったようです。
哲学思想の深さを測り知ろうとする人々は、神の啓示の最初の保管者と呼ばれる密儀に通じている「祭司」の教えに通じなければならないと言われました。

そしてまた、古代の密儀といわれる秘密の教義の深い思想に通じた人は、物事をよく見ることができたようです。
 
私たち人類はどの国の人でも「ことば」を持っています。
同じように、「密儀」にもれっきとした言語があるのです。
そしてそれは『象徴言語』と名づけられました。

それは神秘主義と哲学に共通する言語であるばかりでなく、全<自然>の言語でもあるのです。 
そして人々は象徴によって、言語の限界を越える思想をお互いに伝達しようとしてきたのです。


密儀に参入した人々は、その普遍的な智慧が無教養な人の手に渡って歪曲されないように、常に象徴と寓意の中にその真実を隠していたのです。
その神秘の知恵は、人間が普遍的な言語すなわち「象徴体系」を学ぶときまでは、
ずっと隠されたままでおかれているのです。
天の神秘、神の叡智として。。。。
 
 

『カバラ象徴大系』
カバラとは、秘密の、もしくは隠された伝承不文の律法という意味を持っているようです。さらにユダヤの神秘家であった初期のラビによれば、カバラとは、深遠な原理を手がかりとして、人間がまわりにある外なる宇宙と内なる宇宙の神秘をともに理解することが出来るように、神が人間に授けてくれた賜物なのだそうです。

カバラの教えるところによると、「聖書」のなかには隠された秘密の教義があって、それこそが「聖書」を解読する鍵なのです。
またカバラの体系の理論のなかには、非常に入り組んだ形で「錬金術」「ヘルメス学」「薔薇十字団」「フリーメイソン運動」などの教義が織り込まれていて、現代では「カバラ体系」と「ヘルメス学」また「錬金術思想」はほぼ同義語として受け取られるものとなり、古代密議における深遠な秘教哲学の全てを覆っていると言われています。

この神聖と言われる学問の利用法を、カバリストたちは5つに分けています。

1.自然学的カバラ 
  「自然」の神秘を探究する学者の助けとして使われる

2.類比学的カバラ 
  「自然」の万象間にある一定の関連を明らかにするために体系化され、あらゆる生物と物質は本質的にはひとつであること、人間という「小宇宙」は、神という「大宇宙」の小型模型であることを明らかにする

3.観照的カバラ
  高次の叡智的な能力を使って天球の神秘を明らかにする目的で発達した。そしてそれを手がかりとして、抽象的推理力が発達し、人は無限のなかに無数の世界があること、またその中に様々な被造物が存在することを認識することになった。

4.占星学的カバラ
  天文学の研究者に恒星の力や大きさ、物質の成り立ちを教え、同時に惑星そのものの神秘的な構造を明らかにした。

5.魔法的カバラ
  目に見えない世界の魔物や人間を超えた叡智的存在者を自在に統御しようと望む人によって研究され、呪符やお守り、加持祈祷によって病人を癒すとして高く評価された。


カバリストたちは、カバラは古代イスラエルの貴重な遺産であると考え、この難解な学問を伝授しました。
カバラ体系には、3つの経典と呼ばれる教えの書があります。

1.「セフェール・イェツィラー」 【形成の書】
2.「セフェール・ハ・ゾハール」 【光輝の書】
3.「アポカリュプス」 【黙示録】


カバラ体系の最も深い密議のひとつには、聖書に登場するアダムに関するものがあります。

最初のアダムのなかには、イスラエル人のあらゆる魂が保存されていると主張され、アダムという名前の文字 A・D・M に関する秘儀があるとしています。
この三文字は、アダム、ダビデ、メシア(救世主)の頭文字であって、この三人の人格は、実はひとつの魂である。というものです。
この「魂」は、人類の「世界の魂」を意味していて、アダムが求心的な魂、メシアが
遠心的な魂、そしてダビデがエピゲネシスと呼ばれる魂の状態をさしているといわれています。

ここでカバラの大系を説明するには紙面の限界があるため、割愛しますが、このカバラという思想を理解するためには、「セフェール・イェツィラー」という秘伝文書がありますので、その内容を読まれたい方は是非そちらをお読みになるとよいでしょう。
 
このカバラという知的遺産の教えから、「数秘術」と呼ばれる運命を解読する秘法が生まれました。
 天体の音楽でも紹介した音楽のエゾテリスムのように、音の世界に、寓意と象徴を重ね合わせて智慧を授けるように、数を通してその思想体系を象徴することを意味しているのです。
 
左の図がカバラの象徴する「セフィロトの木」です。
 
斉藤啓一著「秘法カバラ数秘術」(MUBooks)には、占いを越えた運命の解読法を公開しています。
興味のある方は、斉藤氏のHPへリンクしていますので、是非ご覧ください。