錬金術の寓意

ユングが精神分析学の視点から錬金術や神秘主義思想を参照していた頃、
イェイツも詩人としての役割を強く認識し、
魔術的要素を解釈する世界観を展開していました。

どちらも19世紀から20世紀初頭にかけて、
同じ時代を共有していました。

二人は西洋の秘教伝統に繋がっていて
「神=人間」の図式の実現という課題に向けてそれぞれが
「詩」と「心理学」の分野で追究していたのです。

両者の認識する寓意と象徴の読み取りから、錬金術にとって主要となる
言葉の意味の一部だけをのせてみました。

【分離】
魂とその投影とを肉体的領域から又は、あらゆる内的なものに関係する環境条件から解き放つこと。
現代のことばで表すと、感覚的現実から目を転じて、自分自身を内向し、内省し、瞑想すること。
又諸々の欲望や動機を入念に検討し、認識すること。

【結合】
「精神統一」によって自己は再び肉体と結合されます。
精神的立場と肉体が再結合するという意味は、獲得された認識を、現実のものとすること。宇宙の原初状態と、宇宙の神的な無意識状態との再生こそが、「結合する神秘」であるとされています。

【賢者の石】
物質の不和、心の内面的な葛藤、魂の苦悩に治癒をもたらすであろう作用のこと。 
この作用に達するためには、魂の肉体への拘束状態を解放し、葛藤を意識化することをしなければならないのです。
これは、比ゆ的な意味では「死」を意味しています。

【メルクリウス】
アルカヌム(万能薬)を表していて、「水銀」でもあり、「錬金術治療薬」「生命の霊薬」とも呼ばれています。
また「魂」「永遠の水」とも言われ、現代の言葉で言い換えれば
「集合的無意識」と名づけているものの化身であり、具象化されたものです。

キリスト教用語で表すならば、三位一体の素となる、
聖霊の種であるともいえるのです。