錬金術の導師「アデプト」

中世の錬金術師のうち、自分ひとりの意志で
「大奥義」に達した人はほとんどいません。
多くの著書や著者が明らかにしているように、
「師」や「教師」「導師」の助力なしでは、
目的を達成した者はひとりもいないのです。


錬金術テクストの言うところによると、秘密の学智を獲得するためには、
神の授ける霊感によるか、又は「師」と仰ぐ達人の口伝によるしか方法はなく、
また同様に神の助力なしには、何人も「大いなる作業」を
成就させることはできないとされています。

さらに、この「神」の介入は、時として夢の中で起こり、
また幻想と呼ばれる元型イメージによって始まるとも言われているのです。

「師」「教師」「導師」=賢者であり、
その存在は入念に隠蔽されている知者のことです。

その存在は、幾つもの名前を持ち、突然に姿を現したり消えたり、
その姿を変化させることができる術のアデプト(導師)なのです。

西洋の錬金術伝説によれば、16〜18世紀頃、多くの錬金術のアデプトは、
ヨーロッパ中を徘徊していて、自由自在に出没していたそうです。

アデプトは、不死身で、「秘薬」によって永遠の命を保っていて、
幾人かはこの不老不死の霊薬以外には、一切の食物をとらずに
何百年もいきていたといいます。 

アラビアにも、このような天啓を受けたアデプト(導師)が
多数住んでいたといいます。
ヨーロッパの偉大な錬金術師たちは、小アジアで
密議の伝授を受けたことを記しています。

そして、錬金術の弟子たちは、ひとたび最高の秘密を学ぶと、
この貴重な秘密を誰にも打ち明けることがなかったといいます。