錬金術の奥義

中世において、錬金術はひとつの哲学、学問であるだけでなく、
ちゃんとした宗教としても存在していました。

当時、厳格過ぎるほどの宗教的圧迫に反感を持った人々は、
「金を製造する」という寓話のなかに、哲学的な教義を隠したのだといいます。
このようにすることで、個人的な自由を保持することができたのです。

では、そのようにして隠されている奥義とはどのようなもので、
どのようにして隠されているのでしょうか?
錬金術は、三重の術だと言われています。
そしてその偉大な奥義は「三角形」として象徴されました。

この術を難しい概念から少し切り離して、超スーパー簡単に表現してみましょう。

1. 万物には「神」が存在する
2. 「神」は「宇宙霊」である
3. 「宇宙霊」は「霊の種子」として宇宙のあらゆる部分に存在している
4. 宇宙の一部である地球のあらゆるものにも存在する
5. 宇宙で起こることは人間にも起こり、人間に起こることは、
   植物や動物にも起こる。そして金属も種子から成っているので、成長する
6. 鉱石の魂に内在する種子から、ダイアモンドが生じる。
7. ダイアモンドは宇宙のどの物質からも出来るはずである。
8. それなら卑金属や石からでも金は生育し、抽出可能なはずである。
9. 一粒の砂の中には、ダイヤモンドの種子も卑金属の種子も入っている。
10. その胚種はきわめて微小であり、最も精密な顕微鏡でさえ見つけることが
   できないくらいの種子は、成熟と顕現のときをじっとその中で待っている
11. 術を通して成熟を完成させる方法があるはずである

ちょっと無理はありますが、このようにして金属を生育させる「大いなる作業」の成就を願い、成し遂げる技術を磨いていったのが錬金術師だったのです。

これら錬金術の学びを通して「大いなる作業」をすることは、
単に「金」を生育させることが目的ではありません。
術を通じて、【卑金属(無知なるメンタル体の心)は、純金(知恵)に変容される】という人間の意識の過程を象徴することに利用したのです。

錬金術師は、術の本質を分離と溶解、結合と凝固に見ています。

それは術師にとって、分離敵対する相反する要素や性質を再び統合させようとする手順をどうすればよいかというのが問題であることを意味しています。
そして大抵の錬金術師に共通する終局にある理念は、持続(不死・不朽・延命)、
男女両性具有、霊性(精神性)と肉体性の共存、人間性もしくは人間類似性(ホムンクルス)と神性との共在ということにあるのです。
(by C.G. ユング)




★ 「神」への信仰と接近により、人間の意識(地上の物質的宇宙意識)は、
  卑しい動物的欲望から、純粋な金色に輝く「神」の意識へと変容し、
  啓示を受け、救済され、そのなかに「神」を顕現し、わずかなきらめきから
  高貴な栄光に輝く「存在」へと広がってゆくという、
  二つの世界に適用される過程をこうして体系化したものが
  錬金術に隠されている奥義なのです。