錬金術とは

  精神分析・心理学者C・G・ユングは錬金術的伝統の探求を通じて、自分自身の直接的で個人的な「無意識の下降」によって得られた体験と洞察の数々を客観的に存在する類似材料に結びつけ、そうすることによって自らの体験と洞察とをことばにいい表すことができるようになったといいます。

 ユングの著書「結合の神秘」によると、ユングが無意識の心理学を研究するにあたり、この心理学の新しい分野が、錬金術の秘密を解く鍵を提供するばかりでなく、逆に錬金術の方でも無意識の心理学に意味深い歴史的基盤を与えてくれたそうです。

 錬金術の自然哲学的な性格や、宗教運動的な性格は、ほどんど誰にも知られていなかっただけでなく、ユング心理学の基盤となっている「元型」が新たに発見されたという事実も、大抵の人の目に触れることなく、あるいは理解を得るには至らないまま、その真理と奥義は隠されてつづけてきました。

 錬金術とは、エジプトの秘術として存在し「世に知られた最古の学問の1つ」であり「占星術」であり「自然哲学」です。
また霊性(精神性)と肉体性との共在、人間性ないし人間類似性と神性との共在を目的とした自己変容への過程を伝えている「神秘の学問」なのです。

現在残っている最古の文献によると、錬金術と占星術は人間がその助けによって、一度は失ってしまった楽園を再び獲得できるようにと、神が啓示した学問であるとみなされていました。

伝説によれば、エデンの園の出口で、天使はアダムにカバラ(ユダヤの神秘主義思想体系)と錬金術の奥義を授け、人類が神の啓示によって与えられたこれらの秘術の知恵を完全に修得すれば、禁断の木の実の呪いは解け、再びエデンの園に入ることができるようになる、と約束したといいます。  

しかし、人間がエデンの園から追放され、墜落して皮膚をつけた肉体を身につけたように、これらの神聖な学問であった秘術も、重苦しい表現形式と難解さをまとって下位の世界にもたらされたのです。
そのおかげで、霊的超越本性は曇ってしまい、死んだも同然の霊性と死んだとされる学問になってしまったといいます。  

錬金術と占星術の象徴に秘められた知識が、あまりにも深遠であるために、
現代人の知性ではその教義を理解する任に耐えないとされ、現代のどんなに優秀な頭脳を持った知識人であっても、「密議」の示唆する方法によらないでは、可視世界を不可視世界から区別するというヴェールの背後にあるものを見通すことはできないとされているのです。

 

◆錬金術は、神と人間と四大世界という3つの世界における秘儀を象徴するものです。
 賢者や哲学者たちは、この知恵を隠すために、入り組んだ寓話を作り出し、迫害を避けてその存在を遺産として残し又伝承することにしたのです。

◆錬金術は自然な成熟現象に基づいている「増殖の学問」です。  
 無から何かを作り出すのではなく、すでに存在しているものを増やすという工程です。

◆錬金術は愚かな人間には理解することが出来ない学問です。  
 生きた人間を何の変哲もないただの石ころから作ることができる、といえば、「不可能だ!」「頭おかしい?!」と無知を暴露してしまうような愚者と、どの石にも人間の種子があるとする賢者とをふるいにかけるための学問なのです。

◆錬金術は「万物に『神』が内在している」と教えます。  
 「神」は「宇宙霊」であるため、あらゆる事物の「内」にも「外」にも存在しています。
 そして無限の形態をとってその姿を現そうとしているのです。

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