2月20日「風・5」(Etznab trecena Ik・5)
マヤキチェーにおける伝統文化的「新年」です。
年神(Year bearer)が「香(Caban)」から「風(Ik)」に交代します。
民族史的研究によれば、天空を支配するための「力」や「戦闘」をモチーフとするものは、アメリカ先住民族ホピ族も含めプエブロ民族内にはたくさん見られます。
「ワシ」の羽や爪が描かれていれば、それは高く飛翔する能力や空の象徴であり、自然を超越した世界で彼らを守ってくれる魔力をもつ象徴です。ズーニー族は、空高く舞うワシを「天頂の獣の神」として崇めました。
「ナイフウィング(剣の翼)」の神は、明けの明星である「金星」と関係が深いモチーフキャラクターで、ワシの翼や尾は火打石でできたナイフとして描かれます。「ナイフウィング」の神は、魔力を秘めた天の指導者であり支配者でしたが、同時に戦いを象徴する神でもありました。
部族神話のいくつかを読み比べてみると、そこには古代マヤ族の神話モチーフにも登場する「金星」についての二つの顔を見出すことができます。
「夜明け前に現れる明けの明星」と「日没後の夕空に現れる宵の明星」は、「戦争」の星でもあり「愛」を表わすビーナスでもあるという相反する二つの顔です。
メキシコ中央高地の古い都「テオティワカン」は、中米では初めて「都市」と呼べるほどの規模に発達した人口密集地で、南北アメリカ大陸を合わせてコロンブス来訪以前の最大の都市であったといわれています。
テオティワカンの軍事力や経済的影響力は、現在のグアテマラの低地北部のジャングルにまで達していたという記録がマヤの中心地ティカルに残っています。
「ケツァルコアトル(羽毛をもつ蛇)のピラミッド」が建造されたときは「金星」を戦争の象徴とする星としていましたが、その後には雨・雷・稲妻の神で、気象を支配する力をもつ「トラロク」を軍事シンボルとして「金星信仰」に結びつけていました。
この「ケツァルコアトル」をマヤでは「エエカトル」「ククルカン」と呼んでいますが、この神がこれから「年の守護者」として1年間着座されることになります。
ではケツァルコアトルの多様な性格をいくつか紹介してみましょう。
- 人類社会に文明や文化をもたらした守護的な神である。生命を支える大気の神。
- 生命の「息」「呼吸」の化身で、虹色に輝く鳥ケツァールの羽根と、蛇の身体をもち、空気と大地という二つの要素を包摂していた。
- 「夜明けの家の主人」という性格をもち、明けの明星の神。
- 「トラフィスカルパンテクウトリ」(天界12神で戦争の神)という別人格の側面をもち、人々の心に不安や恐怖をかき立て、槍や盾とともに表れる。
- 古代アステカ・マヤの民族は、体系的な観測態勢をしいて金星の動きを監視していて、マヤ暦をあらわす260日の動きとともに、金星の運行の様子を示す座標がドレスデン・コーデックスに記されている。
- トラロク神と金星への信仰に基づいた戦闘行為は、ユカタン半島を中心とするマヤ地域だけでなく、オルメカやメキシコ中央部の壁画にまで描かれている。
戦闘の中央で旗を掲げ世界中に戦いを挑み、新文明をもたらす神としての力を誇示するか、あるいは愛と輝きをもたらす救いの女神「ビーナス」としての金星の力を誇示するかは予測できませんが、時の王への生け贄として天空に舞い上げられたこの数週間の死者をみれば、なんとなくですが前者に傾いているような気がします。。
(北朝鮮の金正男暗殺がもし本当なら、彼は「嵐・13」トラロクの神が天空13に生け贄として捧げられたことになります!)
今朝から外ではすごい勢いで突風が吹きあれ、ゴーゴービュービュー唸っています。
まるで風神の力を誇示するかのように。
3月初旬、宵の明星が月と火星とピラミッドのように並びます。
明けの明星でなくて良かった(´・ω・`) そんな気はしておりますが。。