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▼錬金術と心理学
ユング博士の錬金術と心理学の関連性研究と分析による功績は、
現代の私たちにとって価値ある土台を提供してくれる素晴らしいものとなりました。
ユングは詩人ゲーテの「ファウスト」を好んで研究分析の対象にしていました。
それは「ファウスト」に込められたゲーテの思想があまりにも大きく、
刺激的で謎に満ちているものだったからと述べています。
「ファウスト」という作品は、超俗的で時空を超えていて、ゲーテの本質の一切が
含まれている超越したものだからに他なりません。
ユングにとって錬金術と心理学とを関連づけるための源泉となったのは、
ゲーテとの内面的な関係を示すことであり、また「ファウスト」の象徴表現や
錬金術的な寓意を、心理学的見地から見事に捉えることに
成功したことにあったのです。
錬金術師であり芸術家でもあったW.B.イェイツは、
「錬金術と薔薇…Secret Rose」
という著書において次のように語っています。
「錬金術というものは、現身の衣を捨てて、不死の衣をまとうようになるまで、
魂の内容が次第に蒸溜していくことに他ならない、という考えに突き当たった」
詩人ゲーテやノヴァーリスに多大な影響を与えたとされる18世紀のキリスト教
神秘主義者であるエーティンガー・フリードリヒ・Cは、【象徴寓意:エンブレム】
についての著作をするにあたって、次のような見解を持っていました。
「聖書に出てくる奇蹟や自然の描写は、自然科学の時代にはもう時代遅れとなった。
それは単なる比喩に過ぎない、という考えに対して聖書の森羅万象を『神的なもの、
霊的なものを指し示すエンブレム(寓意)である』と解釈して、
聖書のエンブレムを読み解くために、カバラや錬金術、自然科学を積極的に参照した」
錬金術の理想とするものは、秘密と謎に満ちた「物質的実体」「アントロポス」
「宇宙の魂」「地上の神」を造り出すことで、人間的なあらゆる苦悩からの救済を
意味するものとして、人々は熱望していました。
それは、心理学的に解釈すれば「人間の全体性」という理念に向かって、
意識と無意識の間が疎隔されている状態に橋渡しをする働きかけによって、
そこから生じてくる様々な心の状態を捉えることで、
意義を有するものと考えているということなのです。
それは、錬金術師たちが彼らの体験を具現化したように、現代に生きる私たち
人間の場合も、錬金術師らと同じように、無意識と意識の統合と良好化、
無意識内容の探究と形態化が必要だということなのです。
ユングは、精神分析の臨床による多くの研究によって、自らの意識の窮境を
脱するためには、そのような方法が有用であるという確信を得たと語っています。
無意識であった諸々の内容が、あるとき突然に意識に向かって立ち現れ、
意識を圧倒させてしまいます。
幻想や神秘体験と呼ばれるものが、無意識から立ち昇る遮光であり、錬金術の
奥義に匹敵する賢者の石であり、キリストの救済であり、神の啓示と呼ばれる
類のものであることを錬金術は確かな真実のものとする手段となって
伝承されているのです。
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