錬金術祖師ヘルメスの
「エメラルド板」

伝説によると、半神半人なるヘルメス・トリスメギストスは、
「火」と「霊」によって、叡智の神から「ことば」が与えられ、
それを緑玉の一枚の板に刻みつけたと言われています。

それが、エメラルド版であり錬金術の原理・伝説の源泉である

と言い伝えられてきました。

実際の記述に関しては、原典がエジプト語かシリア語か
ギリシャ語であるか、また起源がギリシャ・インドの哲学か、
シリアの魔術か、占星術か、アラビアの叡智にあるかなどは
はっきりとわかっていません。

それでも、この大いなる秘儀の伝承を巡って研究者たちは集まり、
様々な形で論評を発表し、翻訳を試みたのです。

ここでは、1680年に翻訳されたもので
イギリスの錬金術師であり、自然哲学者、物理学者、天文学者、数学者
近代の大科学者の一人と評されている
「アイザック・ニュートン」の訳を紹介します。


「エメラルド・タブレット」
( Translation of Issac Newton c. 1680)


そは真実なり、偽りなしの、確かなまさに真実。
唯一なるものの奇跡の実現にあたっては、下なるは上なるのごとし、
上なるは下なるのごとし。
そして、万物は一者の適合により一者より来る。なんとなれば、
万物は適合によってこの一者に起因す。

「太陽」はその父「月」はその母、「風」はそれを胎内に宿し、
「大地」はその乳母である。
全世界の、あらゆる完全性の父はここにいる。

その作用と力は完全である。
それが地に転換されれば、甘美にも偉大なる
手腕によって、地より火を、粗雑より精妙をわかつ。

それは地上より天へと昇って再び地へと戻り、優れたもの劣ったものの
作用因を身に付ける。

この手段により、汝は全世界の栄光を手に入れるであろう、そしてそれが故にこそ、すべての曖昧は汝より去るであろう。

その作用はすべての作用を超越している。それゆえ、それはいかなる精妙なるものをも征服し、いかなる堅きものをも貫き通す。

かくして世界は創造された。

これそのものが、かつ、これが成し遂げること。それが、驚くべき適合である。
手段と過程はここに記された。

我はヘルメツ・トリツメギストスと呼ばわる、全世界の哲学の三部分を持つからである。
太陽の作用について私が言ったことは、完了し終わった。


End