第四の門 マーリンの秘密 〜ルシファーの助け〜

『マーリンの秘密』【第四の門】

長らくお待たせいたしました。

無意識は意識の知らないところで、常に変化をしています。
私の無意識は、決して一定しているものではなく、また正常であるかどうかさえ私にもわかりません。
しかし、無意識から立ち昇る言葉と物語りには、私の無意識…また人類の集合的無意識に関与することが現われてくることを、私は疑いません。

第四の門では、一体何がおきているのでしょうか?
お楽しみください(*^_^*)

「ねぇから爺、あそこにある岩の洞窟…あれはもしかしてマーリンが生涯を過ごすことになった洞窟じゃないかしら?!」
「ついにご主人様の住処までやってきてしまったのう…」
「ほんと?! 嬉しいわ〜!わたしマーリンさまに会えるのかしら!マーリンってもしかしてとっても怖い顔してる?それとも超イケメンかしら?」
「($・・)/~~~」

「それはお前次第ってことじゃのう。マーリンの真実の姿は、見たものの心を反映させる鏡姿として現れるのじゃから。」
「そうなの…!ってことは、私の心が魔術師マーリンの見た目の姿を作り上げるってこと〜?」
「さようじゃ。彼は物質界では悪として存在することが多く、悪の象徴のような姿で表現されたり、悪魔だ、魔術のペテン師だ、とさげすまれることが多いのじゃ。
何しろマーリンのお父様は悪魔=サターンなのじゃからのう。ここだけの話、父上のお名前はかの有名なルシファーではないかと言われておる…。
 お父様は大天使長という最高位におられ、神からもっとも愛されていた天使であったそうじゃ。 唯一神の玉座の右側にいることが許され、天使の中でも最高の気品と美しさを備えていたといわれておるのじゃ。 ところで、人間も死んだのちには、ルシファーの同伴者として、キリストに至るという旅を続けねばならないのだと言われておる。 そのお子であるマーリンも、この深い森から脱するためには、わしらの旅の完成が必要であり、さらにわしらが集めたり探し求めたりした真実と悟りがマーリン様にとっても必要なことなのじゃよ。 それゆえ、マーリンの姿の影には旅するものの心が現わされ、心がマーリン自身の姿と対面し、対決し、統合されることが何よりも大切だと言われているのじゃ。」

「何かとってもむずかしいけど、自分の心がマーリンに反映されちゃうっていう『恐怖感』はあるわよねえ…! ああかみさま、どうぞ私の心が悪と不細工を映し出しませんように…!!」


私は覚悟を決めて洞窟の中に向かって声をかけることにしました。
「あの〜マーリンさん、そこにいますか? 私の声、聞こえますか〜〜!」
「…」
「わたしの名前は種一弓です。以前あなたの声を聞きました。それでどうしてもあなたに会いたくてこの森に入ったのです。あなたの使いのからから★のふくろう爺さんと一緒にここまでやってきたのですよ~。」
「…」
「留守なのかしら…」
するとどこからともなく、手や顔にべっとりとするほど湿った霧が発生し、あたり一面を覆いました。目の前は真っ白で何も見えなくなってしまい、私はあわててから爺を呼びました。
「から爺、大丈夫? そばにいる?」
「ここにおる。」


しばらくすると今度は下のほうから一気に風が舞い起こり、渦を巻くようにして木々の葉っぱを揺らしながら上へ上へと上昇してゆきました。 風は白い霧を回しながら連れて登ってゆきました。 すると…
今度は目の前の洞窟が大きく揺れ動きだしました。まるで大きな地震のようです。
右に左にと揺れたなと思うと今度は上に下にと動くので、立ってはいられず下にしゃがみこみました。

洞窟の前をふさいでいた大岩は、大きく振動したことでビリっとヒビが入ったようで、次の瞬間バリバリと音を立てて粉々に砕け零れたのです。 思わず私は後ずさりしました。
もうもうと立ち上がる岩煙がおさまると、洞窟の中から静かなそして低い声で、
「ふう〜う〜うん、ひゅう〜ふー」
彼は洞窟のなかで何度も深呼吸をしているようでした。

時が止まったと感じるほど、冷たくて厳粛な空気に包まれていました。

木と木の間を通って一筋の光が天から降りてきて洞窟の入り口を照らしています。
私はいてもたってもいられない気持ちになって、思わず崩れた岩山の前で跪いて手をつき、頭をたれて時を待ちました。

中からコツ…コツ…と足音が聞こえます。いや違う…杖をつきながらゆっくりと歩いているようでした。 コツ…コツ…
そして入り口付近でその音は止まりました。 

そっと目を上げてみると、洞窟の前には黒影が立っていました。

真っ黒の足首まで隠れるマントを身体にまとって左手には杖を、右手は頭を覆っているマントのはしを持ち、顔には薄いオレンジ色の仮面をかぶった老人が姿を現し、立っていました。彼はその頭の覆いを後ろへ取り去ろうとしていました。
その髪の毛の色は白銀色に輝いていて、腰まであるほどに長く伸びていました。
マーリンはこの人なのでしょうか?

どのようにして、洞窟の中から抜け出てきたのでしょう。

から爺はいつもの声で語りかけました。

「マーリンさま、お久しぶりでございます。そのお姿以前とお変わりございませんようで嬉しく思います。わたくしは現在ここにいる娘に仕える身となって、ふくろうの姿の内に宿っております。ナンバー『44332』にございます。本当にお久しゅうございます。」

から爺は頭を上げずに、涙を流しながら話しているようでした。

「ひさしぶりじゃ、44332。幸いな山に登れたのじゃのう…。」
「はい、そのとおりでございます。」

「そこに座っておる娘よ、おまえが私を呼んだのか?」
「はい!! そうでございます!」
「そうか…よかろう、それではお前の心を映し出すことになるという覚悟は出来ているのだな?」
「はい。たぶん…、いえ…きっと大丈夫でございます。」
「よし。それではおまえ、こちらへ来なさい。」

マントを着たマーリンは、私を呼んで横に立たせました。
そして右手を高く上げると、その手で空中に丸く円を描きました。
するとそこには透明な鏡が現われたのです。
透明な鏡といってもそれは水のようでした。

そしてマーリンはこういったのです。
「私の前に来なさい。 そしてこの円鏡の向こう側に立ちなさい。 おまえから私を見ると私の本当の姿が見えるだろう。 それこそがお前の心の正体であり、また私の本当の姿なのだから。」
「ただし、私は今とても苦悩の中にいる。 戦わねばならない時が近づいておるからじゃ。よいか、お前の目の前に立つものが、どんなものであっても、決してその事実から目を背けてはならぬ。 よいな。 今の私は純粋な鏡の性質から離れてしまっている。 そのことがお前の真実の姿に影響しなければよいのじゃが…」

私は円鏡の前に立ち、目を閉じていました。
しっかりとこぶしを握りしめ、そっと瞼を開けたのです。
そこには、真っ赤なドレスを着て、黄金のティアラを頭にのせ、白い手袋をはめた女王が座っているのが見えました。
「女王?!」
鏡の中の女王は、私に向かって笑みを浮かべ、静かに囁きました。

「天を司る皇帝に相応しいのは、地を司る女帝です」

私は何が何だかわからないまま、鏡の中を見つめていました。
「娘よ、そこに見える姿こそがお前の真実の姿じゃ。お前の無意識に宿るわたしの化身なのじゃ。」

すると私の横にから爺が近づいてきて、鏡の中をのぞきこみました。
私はふたたび視線を円鏡の中へと移しました。

なんと、赤いドレスを着た女帝のとなりにいるのは、ふくろうではなく仮面をつけた魔術師でした。
から爺はそのしゃがれた声で、女帝に向かって話始めました。

「fivviid vjovmoei jif eJIllv iewoovim?」

「ケジュティクーウィ ジョヴェイオェヴェイ ッピッミウィワエッヴィッツ」
「わかりました」

そういうとから爺は鏡の中から姿を消し、こんどは向こう側にいるマーリンのところへ行って何かを話していました。

マーリンは何を苦悩しているのでしょう?
私の無意識が女帝であることが、いったい何を意味しているのでしょう?

私は鏡に映る女王の美しさに惹きつけられて呆然としていました。



「さあ、すぐにここを離れましょう!! 時が近づいていますから!」
「ええっ??!」
1・・・2・・・3
3秒経つか経たないかのうちに、洞窟もマーリンも円鏡も、そして真っ赤なドレスを着た女帝もすべて消えてしまったのです。

私はまるで夢を見ているかのようでした。

真っ暗で何も見えないところで、から爺の声とともに一筋の光が差し込んできました。

「さあて・・・地球に住んでいると、どうも感覚が鈍ってしまうようじゃ。
目で見るものも手にとって触ることができるものも、実はその後ろ側にある真実の世界の片側でしかないことを、こちらの世界におると忘れてしまいそうになる。
・・・最近どうも嫌な予感がしておったのじゃが、やっぱりその通りじゃった!
マーリンさまの化身と仮面が教えてくれた真実は、わしを確信に導いてくれたのじゃ。

「なに? その嫌な予感の確信って?!」
「ふむ…」

から爺は額にしわをよせたり延ばしたりしながら視線を上へ下へと移し変え、まるで百面相をしているかのようだった。
私はじれったさから、つい声高にから爺を責めてしまいました。

「大変なことなら、まずは私に話してよ!無意識のパートナーでしょ!」
から爺は、光の筋にてのひらをあて、そっと呟いた。

「じつは、ナグゥが現われたんじゃよ…。わしの夢の中に。」
「NAGUu?」

「さよう。マーリン様はナグゥが大嫌いで、十字架にはりつけて殺したことが56回、地下に生き埋めにしたことが38回、火あぶりにしたことが19回に・・・それから…と、覚えているのも大変なくらいじゃ。」
「そんなに殺したって、ナグゥってゾンビ?!」
「ゾンビとは何じゃ?」
「ゾンビはいくら殺しても何度殺しても生き返る人、死なないってことよ」

「ゾンビならまだよいかもしれんぞ! やつは死なないのではなく『死ぬ』ためにこそ『生まれてくる』のじゃよ。
 残酷に死ぬことが何よりも幸せであり、死ぬためなら、何でもする! 『死』を恐れぬものには、とことん『死』の魅力を味わわせるやつじゃ。 そして『死』こそが勝利だと叫び続ける…。 まるで死神の手下か魔王の側近かと思うほどじゃよ。」

「ほんとに! 何て恐ろしいやつなのかしら!」

「とにかくナグゥが現われたからには、なんとしても人間にその存在を知らせなくてはならないのじゃ。そのままだと地球はなくなってしまうやもしれぬ!! さらにその事がどれだけマーリン様を苦しめることになっているか…!」

私はこのあと、から爺から重大な秘密を聞かされることになりました。


1.ナグゥは、「死」が人間にとって魅力あるものだと理解されそうな時代に現れる。
2.ナグゥは、天体の星辰を操ることが出来る
3.マーリンさまの持つ永遠のいのちと引き換えに、地球を救ってやると脅していること
4.ナグゥが現れた年から32年後には、かならず不吉なことがおこる。
 一つの惑星が地球に大接近するということ。 衝突すれば地球は木端微塵になる!
5.そして最後に、ナグゥは統合された存在ゆえ、正しい存在として受け入れられたときには
  ルシファーの分身となり、天においても地においても、人の助け手となる。
ということでした。



ルシファーは、マーリンのお父様であり、「明けの明星」「金星」ともいわれ、天上の世界においてもともとは天使の長として活躍していました。神の右側に仕えることを許された、天使長という座にいたのです。彼の強大な力とその美しさは、神の寵愛を最も強く受けたとされています。
大天使ミカエルの双子の分身として、善を支える存在でした。

ミカエルの双子の分身がルシファーなんて、まるでパーシファルとマーリンの関係のようです。

マーリンにとって、パーシファルの影でいること以上にルシファーの分身…つまり、お父様の分身となる「ナグゥ」との対決がどんなに辛くて苦しいことかを知ることとなった私は、大きな不安を抱えたまま、マーリンの秘密とナグゥの秘密に何か関連性はないのか、どうすれば地球を不吉な破壊から守ることが出来るのかをしばらく考えることにしたのです。

つづく