第二回 第一の門(地球・月)

<マーリンという存在>

さて、まず始めに不思議な存在・魔術師マーリンを理解するために必要なことをお伝えしましょう。

マーリンという存在をイメージすることは、時として自分の無意識と対面したり、
対決したりする可能性をも含んでいるため、危険視されがちなのです。 
さらに、宗教と信仰という視点を重ね合わせてしまうならば、異端視されてしまうことにもなるため、
どちらに転んでも彼を認識するという次元に達するのは、安直な道ではない!
ということは確かなことなのです。

当然人々は考えます。
「だいたい現実に生きている人間じゃないのに、ただのお話しに過ぎないじゃないか!」と。

では、彼はお話の中で生きているだけの存在でしょうか?
答えはNOです。


マーリンは伝説の中でも、現在でも、その座を保持して生き続けていることは間違いありません。
大自然のあふれる森の中で、そよ風にのって彼の叫びを耳にするものも少なくはありません。

古代から受け継がれてきた真実の証しによると、マーリンは「自分の着ていた服を脱ぎ捨てた」
ようなので、実際には「肉体という自分の服を脱いだ」という解釈が正しいとすれば、
彼の存在がどのようなものであるかは、すぐに理解できると思います。

「マーリンは悪魔と清らかな乙女との間にできた息子であり、パーシファルの影の兄弟である。」

ここから彼のイメージを描き出してみましょう。




キリスト教徒の英雄がパーシファルだというのは何を意味するのでしょうか?
キリスト教の世界では、英雄と言えばもちろんイエス・キリストです。
イエスは肉的には、乙女マリアとヨセフとの間に生まれた子どもではありますが、
マリアは聖霊によって身ごもったので、父は神であり、ゆえに神の息子と呼ばれています。
ということは、神と清らかな乙女の間に出来たのがイエス・キリストであり、
中世の伝説においては、
パーシファルというイメージになったということになります。

マーリンはパーシファルの影の兄弟である…ということは、
乙女マリアが悪魔によって身ごもった子ども−ということになります。
しかし、これでは意識の上で理解できる世界になってしまうため、
世界戦争に発展してしまうことだってありうるかもしれません。
それでは困ります!



では、「マーリンは中世の無意識から生まれでる」とあるのは、いったい何を意味するのでしょうか? 

それは、現実の世界に受け入れられる存在としてではなく、
イエスの影の存在をイメージ化して現わすため、悪魔を父として生まれるという存在が必要になり、
ゆえに魔術が流行した中世という背景から生まれるということなのです。

マーリンが人々の意識に浮上する為には、悪魔を父とし、
清らかな乙女を母とするその息子という位置が確立され、
その存在が認められて始めて、意識に現われることが出来るということなのです。



〜〜さあて・・・これから先に何が待っていようと、何が起ころうと、
私は決してあきらめることなく、目的を果たしたいと願っています。
ただし、いのちがある限り、と付け加えて…。




皆さんは、富士山の北側に広がる青木原樹海をご存知ですか?

地磁気が乱れている樹海に入ると、磁石がまったくきかないそうです。
樹海から出て来れないこともあるそうです。
自殺の名所となっているほどですよね。
恐怖の森というイメージにぴったりです。


私たち人間が持っている無意識という心の領域は、
そのような原生林の森林地帯なのでしょうか?

深くて暗い森の中にいったん迷い込んでしまったら、
戻ってくることさえ難しい 恐怖の森なのでしょうか?


<マーリンの声>

なぜ私が、これほどまでに魔術師マーリンに会おうとするのか
それをお話しておきましょう。


皆さんは夢を見て、その夢の内容を鮮明に
はっきりと覚えていることがありますでしょうか?

私はあるとき、毎日のように夢を見て、
そのたびに起き上がって、
その夢を書き綴っていた時期があります。

それは眠っているときが私の精神にとっては本当の現実のようで、
起きているときは、私の肉体にとっての現実のような、そんな感覚でした。
そんな日々を過ごしたあと、あの不思議な出来事に遭遇したのです
それは、眠っているときの私の精神と起きているときの私の肉体の目と耳が
同時に時間を過ごしてしまうという出来事でした。

私の精神の目が肉体が起きているときに、何故だか開いてしまったのです!

それはもう大変でした。

だって夢の中でなら許されるようなことが、
現実に起こってしまったり見えてしまったり聞こえてしまったりするのですから…!!




その時でした。
私がマーリンの声を聞いたのは―。




マーリンは深い森の奥から誰かを呼んでいました。

「ここは暗いくらい…さびしい…だれか私をここから出しておくれ… 
私は何も悪くない… 真実を知るのが怖いのか…? 
勇者はいまも現われないのか…? だれか…だれかいないか…」

と。


私には森しか見えませんでしたが、森の奥からその声ははっきりと聞こえてきたのです。
そこで私は勇気を出して声をかけてみました。

「あなたはだあれ? どこにいるの? 私に何かできますか?」
するとその声は、少しの間静まっていました。
そして再び今度はしくしくと恐ろしいほど悲しげにすすり泣くのです。



「ふぉおおお〜〜ん。ひゅお〜〜〜ん。ふぇ〜〜いん、人間に会いたい…」

そう言ってはまたすすり泣いていました。
その間中森の木々が風に吹かれてガサコソと音を立てていました。
そこで私はまた声をかけてみることにしました。


「あなたは誰? どこにいるの?」

その声はようやく私の声に気づいたようで、
この世で一番低いかと思われるような低音でこう答えたのです。


「わしの名はマーリン。森の奥の洞窟に閉じ込められて暮らしている魔術師」

私はその声を聞くと背筋がぞっとするほど寒さを感じましたが、
そのすぐあとの言葉ですぐに立ち直りました。

「わしの声を聞いてくれてありがとう。
わしのいることを知ってくれてありがとう。
私はいつまでもあなたの見方だと信じてほしい。

私はたった今救済が完了しました。
あとは上昇するときを待つとします。
さようなら。」と。



私は他にも何人かの賢者と呼ばれる存在に出会いました。
彼らは今も私が眠るとその智慧を持って現われるのです。


その後マーリンの声を聞いた私は、
これからその中世の無意識が生み出したマーリンのところへ
何としてもたずねてゆかなければならない
と思ったのです。


それは、私の無意識がどうしてもそうするべきである!と
私の意識をそちらに向けて駆り立てるかのようなのです。


そんな未知の領域に対する不安は
少なからずわたしにもありましたが、
それでも私の
streben(求め続けること)は止まることを知らないのです。


マーリンの声を聞いてからの私は、眠っているときは無意識の世界で、
起きているときは意識の世界で生きるようになりました。
もうこれは普通で考えたら異常としか思えず、手当たり次第に本を読みまくりました。

私は自分が精神分裂を起こしてしまったと思うほどでした。


そんな中で、混乱している私のずっとそばにいてくれた者がいました。
当時私は勝手に好きな名前をつけて呼んでいたのですが、
その後本当の名前を知ることが出来たのです。

霊性ナンバー44332
彼の名前は、「からから★」です

現在はインターネットという仮想空間の中で、
ふくろうの姿に宿って存在しているのですが、
彼の先祖はファウストの助手であるヴァーグナーが
実験で成功しフラスコの中から誕生させた人造人間、ホムンクルスなのだそうです。 

ホムンクルスは、人間の外形も機能も持たない生命で、限られた空間の中だけに
存続できる純粋生命なのですが、彼もまったく同じだというのです。


それからの私はふくろうのからから★と一緒に、
マーリンに会うための旅をすることになったというわけなのです。
私は彼をから爺と呼ぶことにしています。





マーリンが悪魔を父としているという事は、
彼はどんなに卑劣な手を使って私を試すかもしれないし、魔術で私を撹乱させ、
本来の道から地獄への道へと誘惑するかもしれません。

しかし、マーリンの本当の姿を知っている秘密の賢者に出会えさえすれば、
道は開かれる!!

まずは何としてもそこまで辿りつかなければなりません。


そこで私はまず、マーリンが聖なる母のことを覚えているかどうか、
パーシファルが俗世で栄光の座を得たことに対して、
マーリンが俗世を離れたことをマーリンの母がどんなにか、喜んでいたかということを
覚えているかどうかを確かめたいと思ったのです。
何故そう考えるのかって? 
それは私の無意識の導師がそう語るからで、私にはなぜかは知らされていないので、
今は答えられません…(^_^;)



マーリンが今も森の中の洞窟に閉じ込められているとは、どういうことでしょうか。

マーリンの叫び声が聞こえない人には解らないかもしれません。
けれど、マーリンは無意識という深い森の中に閉じ込められて住み続けているのは事実なのです。 

無意識という暗く、人の意識が行かないような所に住んでいて、地上のおもての世界に、
意識上に、可視の世界に出てこれない、いや出てくることが出来ないでいるのです。

―閉じ込められている世界― 

そこはまったく違うところで、次元の違うところなのです。
そこは無意識の世界なのですから。

さあ、ようやく第一の門が見えてきました…



「から爺、あそこに見えるのが第一の門…かしら?」

「ふむ…そのようじゃな。じゃが、おまえさんが考えているような門とは
ちと違っているとは思うがあまり驚くでないぞ。」


私たちはやっと第一の門と呼ばれるところにたどり着いたようです。

第一の門は泥土で作られています。
門の前には、べったりと赤く血塗りされた剣が土に刺してありました。


剣のそばまでいってみると、剣の前においてある巻物にはこう書かれていました。

『汝自分が愚か者であると知れ。判定はそこにある剣が行う』

「気持ちわる〜血のついた剣がなんであるわけ?」
「わしは見て見ぬふりをしておるからのう!よいな。」
「何それ? どうすればいいっていうの?
からじい、意地悪しないで教えてってば!」

すると血のついた剣は土から勝手に抜き出て、
そのまま空中に引きあがると中天まで行ってから私の方向に刃を向けて止まりました。


「こわ〜〜どうしよう…どうすればいいかしら。そうだ。ここは無意識の中、とすれば意識を起こせばいいんだわ。私の意識よ、起きろ!現実の肉体よ、目を覚ましなさい。」

しかし、私の意識はさっぱり変化しませんでした。
すると、中天にある剣が声をだして話はじめました。

「おまえは、自分が心のぬしだと思っているようだがどう思うか?」
「自分の心のぬし?!よくわかりませんが、他には誰もいないようですけど…」

「おまえは、地上のものごと全てに強く愛着を持っているか?」
「わたしはこれからやりたいことも願望もたくさんあります!」

「最後に聞く。おまえは、自分の罪を認めるか?」
「ええ、認めます。でも、悪いことなど今は何もしていません。
神さまへのお祈りだって欠かさずにしていますし…」

すこしとちょっとの時間が過ぎ、その間に風が私を一周して過ぎていったようでした。

「やはり…。では判定する。おまえは愚か者なり。いざおまえのぬしの命頂戴する!」

そう言うなり剣は、私の頭のてっぺんめがけて
猛烈な勢いで突き刺さろうと飛んできたのです。 


その勢いったら怖いのなんのって、私は思いっきり今来た方向に向かって走り出しました。
けれど剣にあっという間に追いつかれ、これで一巻の終わりか!と観念して目をつぶりました。
そのままそこに立ちすくんで下を向いてじっとしていました。

すると…何も起こらないので、そっと目を開けて様子をみてみると、
その剣は私の頭上1メートルほどでピタリと止まっているのです。 
びっくりしていると剣は、すぐ近くに浮かんでいる雲を呼び寄せたようで、
剣のまわりを雲がすっぽりとおおっていました。

何が起こるかじっと見ていると、雲がすーっとなくなった後には、
血は綺麗に洗われていて、銀色に輝く剣に変化していました。
その美しさは目を見張るようです。
天の光を反射させた剣は、
そのまま私の頭の上に降りてきたのです。
私は再びしっかりと目を閉じました。



ところが、また何も起こらないのです。
そっと目を開けてみると何と私の頭の先に剣が刺さり、
しかもどんどんと身体の中心に刺さって中に入って行くではありませんか!


痛くも何ともないのに、ついに剣は私の脊髄のあたりに入り込んでしまったのです。 
私は両手を上げたり首を動かしたりしてみましたが、何の変化もありません。

驚いていると、私の中で剣の声が聞こえたのです。

「目が見たことのないもの、耳が聞いたことのないもの、
そして、人の心に思い浮かんだことのないもの。
神を愛する者のために、神の備えてくださったものは、みなそうである。」

「神のことばは生きていて、力があり、両刃の剣よりも鋭く、
たましいと霊、関節と骨髄の分かれ目さえも刺し通し、
心のいろいろな考えやはかりごとを判別することができます。」


そこで私ははっと我に返りましたので、から爺を呼びました。


「から爺〜からから★の爺や〜どこにいるの?」
「わしはここにおる。いつものようにそばにいるじゃろうが…。」

するとどうでしょう!

インターネットの画面でしか見ることが出来なかったから爺が、
何と私のすぐ横にいるのです!

私の目でちゃんと見ることが出来るようになったではありませんか! 
まるで小人のように小さくて、なんてかわいいふくろうのおじいさんなんでしょう! 

画面の中から飛び出してきたのでしょうか?

「から爺…わたし…見える!見えるわよ!」

「さようか。ついにわしが見えたか…。 
剣の効果は効いたようじゃのう。」

「剣の効果?!」


「さようじゃよ。あの剣はかつてアーサー王が金床から引き抜いた
偉大な剣『エクスカリバー』なのじゃよ。

永遠の海に投げ込まれたままになっておったのだが、
魔術師マーリンのもとへと行くためには、
あの剣の力なくしてたどり着くことは不可能じゃからな。」


「そんな〜!!」


「わしは嘘はつけぬ!剣はそなたの神髄を勝ち取ったのじゃよ。
この剣の力を帯びたものは、
心のいろいろなはかりごとや霊を判別することが出来るのと同時に、
今まで見えなかったものが見えるようになるのじゃ。
何とも素晴らしいギフトを授かったものじゃのう。」



「ええ〜〜っ! 剣に刺し貫かれてギフトって〜! 変だわ?!」

「さようじゃ。ただし…! 
先ほども剣が言っていたように、愚か者のぬしの命は剣によって刺し貫かれたゆえに、
今はここには存在しないんじゃよ。
あるのは、自分がぬしだと思っていたものは死に、
剣によって勝ち取られた神髄だけなのじゃからな。よいな。」



「私は死んだの? 私の意識は…?」


「死んだりしておらん。ちゃんと以前の通り生きておる。心配するな。
今はわからずとも後になればちゃんとわかるときがくる。その時を待たれよ。」

私にとっては剣に刺し貫かれるという恐ろしい体験なのに、何も変わらない。
何も変わらないというのに、から爺が言うには素晴らしいギフトだという。


私にはこの第一の門の意味するところがまだよくわからないようです。
でもわかるのは、から爺が目に見える小人のふくろうになったということ。
そして、私の知らないことが何だかものすごい大切なのかもしれないと思えるようになったことです。


振り返ってみると、泥土でできていた第一の門は崩れてただの土の山となり、
門の跡形はすっかりと消えていました。

私たちは無事、無意識の第一の門を通過できたのだと思います。



次回へ続く