第一回 『魔術師マーリン』
さて皆さんは、「魔術師マーリン」のことをどれだけご存知でしょうか…。
アーサー王物語の中には、魔術師マーリンという不思議な謎に満ちた人物が登場します。
その伝説の一つに、イエス・キリストが悪の束縛から世の人を解放するためにと、この世界に誕生されたとき、悪魔は、彼の労苦を無に帰するために「反キリスト」を送ってやろうと決意した、というお話があります。
悪魔は龍の形をしており、家族を滅ぼした悪霊をのがれ、聖域とされる場所に避難したという若い女性に近づきました。
そして、彼女を身ごもらせ、マーリンが誕生したというのです。
彼は<人間の母>と<悪魔の父>の、両方の特徴を持っていました。
けれど、マーリンは暗闇の力に屈して仕えることをしませんでした。
真実の光に改心し、悪魔の父親から受け継いだ「超自然的な能力」のうち、
『予言』と『奇跡』をおこなうという二つの力だけを維持することにしたのです。
王となるアーサーは、幼い頃にそのような力を持った魔術師マーリンに預けられます。
そのアーサーは、若いうちに秘密の教義と自然魔術と呼ばれる最も深い秘密を教えられて育ったのです。
また別の伝説ではマーリンというのは、中世の無意識がつくりだした、
パーシファルと並びたつイメージであると言われています。
パーシファルはキリスト教徒の英雄であり、マーリンは悪魔と清らかな乙女との間にできた
息子として、パーシファルの影の兄弟なのです。
マーリンの非道の父親について、実際には悪の力というのは誤った解釈から生まれた
誤解である、とも言われています。
「密儀」の参入者に適用される寓意的な言及から述べると、
マーリンは蛇や龍の『哲学的な息子』であって、
「自然」をこの世の母、蛇や龍の形をした「知恵」を不死の父と認識することなのです。
マーリンの助けによってアーサーはイギリスの指導的な将軍となりました。
さらにマーリンは彼を助け、ついに「湖の姫」から聖剣エクスカリバーを得させることに
成功したのです。
「円卓」を確立し、義務を果たした後、マーリンはその姿を消したのです。
一説によると、彼は空気のなかに消え入り、今もなお
意のままに人間と交わる影として存在しているそうです。
この伝説のあらわれた12世紀には、その伝説の本当の意味が理解されるだけの前提条件が
まだなかった為、マーリンは生涯追放されたままになり、
俗世から消え去って森の中で過ごしたという説もあります。
彼は自発的に巨大な石の洞窟に退き、内側からそれを封印したそうです。
そして「マーリンの叫び」は彼の死後も森から聞こえつづけている。
魔術師マーリンの真実は誰にも理解されなかったため、安らげずにいまだ森の中で
生き続けていることを意味しているのですと…。
その後、マーリンの秘密はマーキュリーの姿で錬金術に受け継がれ、
再び心理学者であるユング博士によって、無意識の心理学で取り上げられることとなりました。
魔術師マーリンは、森の中から封印を解かれるべきときがついにやって来たのかと
復活を夢見て喜んでいたことでしょう。
しかしながら、生前ユング博士は、人々にはなおその真意と秘密の奥義が理解されないままであった
と語っています。
ユングは、無意識と密接にかかわりながら生きるということが、人々にとってはどんなに難しいことなのかと、くりかえし思い知らされなければならなかった、
と告白しています。
さあ、魔術師マーリンがいかに不思議な存在であったか理解して頂けましたでしょうか?
さて…ここからは、種一弓と魔術師マーリンとが繰り広げる深〜い森の奥でのお話です。
対決となるか救出となるか、犠牲となるか殺害となるか…
この先を読み進めることは、種一弓の無意識と魔術師マーリンの住む世界の門を
くぐるということになるでしょう。
どの地点から意識を抜け出した無意識の世界へ突入するのか、
はっきり言うと私にもわからないのです。
すべては神の意風の吹くままに行われるからです。
私はどうしても彼のいるところへ行かなければならないのです。
もしかすると、あなたの無意識に危害を及ぼすことになると大変なので、
無意識が健康でない方は、
これから先を読むことは
今は止めておいた方がよいかもしれない…
次回へ続く